オフィスマガジン

『嫌われる勇気』 自己啓発の源流「アドラー」の教え

『すべての悩みは対人関係の悩み』

『人は今、この瞬間から幸せになることができる具体的な処方箋』

 

アルフレッド・アドラー (Alfred Adler) 1870/2/7 – 1937/5/28

 

「嫌われる勇気」は、ダイヤモンド社から2013年に出版され、累計発行部数は200万部を超えるベストセラーです。テレビでも紹介されるほど大ヒットしました。Amazonでは☆が4.4、カスタマーレビューは総数2,300を超えています。

フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称されるアルフレッド・アドラーの思想 (アドラー心理学) を、哲人(教える人)と青年(質問する人)の対話を通して、アドラー心理学の内容をやさしくわかりやすく解説しています。

「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な「答え」を提示しています。

主に「人の目を気にしてしまう」「劣等感が消えない」「幸せを感じられない」などといった悩みの解決方法を示しています。

 

ジークムント・フロイト (Sigmund Freud) 1856/5/6 – 1939/9/23

 

カール・グスタフ・ユング (Carl Gustav Jung) 1875/7/26 – 1961/6/6

 

 

1. 承認欲求を捨てる

 

人の目を気にせずに自分らしい人生を送るためには、まず始めに承認欲求を捨てるべきだと書かれています。承認欲求というのは、人間誰しもが持っている「周りに認められたい」「尊敬されたい」「好かれたい」といった欲求のことです。この承認欲求があるがゆえに、人は自分の本来の目的を見失ってしまって、自分らしさや幸せといったものから遠ざかってしまうという主張です。

承認欲求が大きい人は常に回りの目を気にしなければなりません。例えば、自分はいい大学に入り、有名企業に就職できた。だけどいまいち幸せを感じることができないというような人がいたとします。この人は実は無意識に「周りから認められたい」「羨ましがられたい」という理由でいい大学を選び、有名企業に就職していた。つまり自分が本当に好きなこと、本当にやりたいことではなく、周りから評価されることを無意識に選んでいたのではないか、自分らしい人生を生きることができたていないから幸せではないのではないかという主張です。

しかし、承認欲求を捨てるといっても、なかなか難しいことです。そこでアドラーは「課題の分離」というものを行うことで、この承認欲求というものを捨てることができると主張しています。

 

 

2. 課題の分離

 

「課題の分離」とは、自分の課題と他者の課題とを分けて、自分の課題だけに集中するということです。具体例として「馬を水辺に連れて行けても、水を飲ませることはできない」というヨーロッパのことわざを挙げています。「馬を水辺に連れて行く」という行為は、自分の課題、つまり自分でコントロールできる変えられる範囲の部分です。

これに対して「馬が水を飲むかどうか」ということは、自分ではどうしようもありません。それは馬の自由、つまり自分ではコントロールできない他者の課題なのです。このように自分でコントロールできる自分の課題と、自分ではどうしようもできない他者の課題とをしっかりと区別して、自分の課題だけに集中すべきであるという主張です。

他者が自分をどう思うかどうかというのは、他者の課題なのでいくら考えてもしょうがないことなのです。コントロール可能な自分の課題だけに集中せよと説いています。

ただ、「自分の課題にコミットして他者の課題は無視する」という教えでは、自己中心的な振る舞いで、人間関係が希薄になるような気がして寂しい感じがします。しかし、著者が提唱する目指すべき人間関係はそのような寂しいものではありません。

 

 

3. 対人関係のゴール=共同体感覚

 

では、どんな間関係を築いていくべきなのか、それは対人関係のゴールは「共同体感覚」であるということです。この「共同体感覚」とは、他者を仲間だとみなし、そこに自分の居場所があると感じられることです。この感覚を目指すべきであると著者は言います。「各々が各々の理想の自分に近づくために、自分の課題のみにコミットする」という状態です。それぞれの目標に向かっている仲間であるということです。これはどっちが優れている、劣っているという上下関係ではなく、「同じではないけれど対等」という関係です。

そして他者に貢献するこことで、自分の価値を実感できるといいます。それぞれがそれぞれの目標に向かって、それぞれのペースで努力していくなかで、自分が他者の助けになることがあれば積極的に力を貸しあうべきです。そうして貢献できるときに、自分の存在価値を実感できると主張しています。

 

 

「嫌われる勇気」というタイトルですが、「他者があなたを嫌うかどうかは、あなたの問題ではなく、他者の問題である」ので、「誰かに嫌われるということは、自由に、自らの方針に沿って生きていることの証」であり、その勇気を持ちなさいという意味です。アドラーの心理学は「勇気」の心理学です。

 

文中には印象に残った言葉がいくつかありました。

 

『あなたが変われないでいるのは、自ら対して「変わらない」という決断を下しているからなのです』

 

『つまり人は、いろいろと不満はあったとしても、「このままのわたし」でいることのほうが楽であり、安心なのです』

 

『われわれを苦しめる劣等感は「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」なのだ』

 

『自分を変えることができるのは、自分しかいません』

 

 

アドラーの教えはシンプルですが、実践するのはなかなか難しい面もあります。

「嫌われる勇気」は、何度も読み返しては実践していきたいと思える良書です。

 

 

著者

岸見一郎 (きしみ・いちろう)

古賀史健 (こが・ふみたけ)

 

ダイヤモンド社

2013年12月12日 第1刷 発行

2019年7月23日 第50刷 発行

定価:本体 1,500円+税

(龍三郎)

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